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論考:結社の自由との関係について

結社の自由との関係について

(1)結社とは、共同の目的のためにする特定の多数人の継続的な精神的結合体をいう1)。
憲法21条1項は、結社の自由を言論・出版の自由と同一の条文で保障している。

人が一定の目的のために他者と相集いもしくは精神的に結合する行為自体が、人の精神活動の所産の一つの発現形態である。
さらに、人は、結合を通じて集団としての意思を形成し、それを集団として外部に自由に表明する。
したがって、結社の自由は表現の自由の一つの類型である。

後に述べる内心における思想や信条は、外部に表明され、他者に伝達されてこそ社会的な効用を発揮できるという意味において、表現の自由はとりわけ重要である。

それでは、この重要な結社の自由とはなぜ必要なのだろうか。
橋本基弘教授は3つの理由を挙げる2)。

第1に、結社は個々人を結びつけることによって、単独では成し遂げられなかった目的を実現することを可能にする。結社の自由は個人の力を束ね、個人の力を総和以上の力を発揮する手段となる。

第2に、結社は国家と個人の間に介在し、国家権力の行使に伴う衝撃力を緩和する。

第3に、結社は構成員の間で連帯意識を育み、個人の人格の発展に寄与する。

以上のように、結社の自由は無力な個人が他者との連帯の中で自己を確立し、国家権力から個人の権利を集団的に保障すると同時に、共同して何らかの目的を実現する手段として機能する。

したがって、自分が好まない団体に強制的に加入させられたり、団体からの離脱を制限されることは憲法21条1項の結社の自由の理念に抵触する。

(2)次に、司法書士会への入会と同時にその会員となる旨、入会を強制している政治連盟は、そもそも憲法21条1項にいう結社にあたるであろうか。

結社の範囲については、政治的結社のみならず経済的・宗教的・学問的・芸術的・社会的などすべての結社が含まれていると解されている3)。
私が所属している日本司法書士政治連盟大分会の規約第2条には、目的として次のように規定されている。

「本会は、司法書士の利益を代表してその権益を守るため日本司法書士政治連盟及び大分県司法書士会との緊密な連絡により、司法書士の政治意識を高揚し、司法書士制度確立のため必要な政治活動を行うとともに、国民の権利の保全につき司法書士がより一層貢献できるよう必要な活動を行うことを目的とする」。

目的として明らかに政治活動を掲げているのであるから、まさに政治的結社に他ならない。
この政治的結社であるところの政治連盟が結成された目的は、おもに司法書士法改正の際に司法書士制度という職域を防衛するために、決して司法書士会全体の不利にはならないように、有利な法改正実現のため政界対策をすることであると推測される4)。
個人の力では到底このような活動はできないのだから、政治団体を作るという「積極的結社の自由」の必要性はある。

しかし、多様な価値観をもつ司法書士の中には、そのような活動に賛同できない者もいるのであり、その活動に参画したくはない、またそのような結社には加入したくない者もいるのである。
いわゆる「消極的結社の自由」である。
私は、強制加入主義が採用されている大分県司法書士会に入会はしたが、政治連盟に加入する意思もなかったし、加入の申し込みもしなかったのである。

自分と意見や信条を共有しない他の司法書士と強制的に連帯させられないことは、憲法19条の「思想及び良心の自由」に含まれている沈黙の自由(狭義の沈黙の自由)でも保障されるが、憲法21条1項の消極的結社の自由(広義の沈黙の自由)でもさらに保障されている。

この後者の消極的結社の自由については、翻って司法書士会のような強制加入団体は、憲法21条に違反しないかどうか検討しておく必要がある。
現在までのところ、最高裁判決には強制加入の問題を結社の自由の観点から検討したものはない。

ただ、職業選択の自由(憲法22条1項)の問題として、弁護士会への強制加入を合憲と判断したものがある。
5) 学説においては、弁護士、司法書士等の業務の公共性、専門性を考慮しつつ、強制加入団体の活動を制限することを条件にしてその合憲性を認めるものが多い。

たとえば、「専門的技術を要し公共的性格を有する職業の団体については、当該職業の専門性・公共性を維持するために必要で、かつ、当該団体の目的と活動が会員の職業倫理の向上や職務の改善等を図ることに限定されていることを理由として、強制加入をとることも許される」という見解6)である。

同様に、「現行法上、一定の職業について、結社の強制(強制設立)や加入強制が直接・間接に定められているが(弁護士法)、この種の規制については、職業が高度の専門技術性をもちその専門技術的水準・公共性を維持確保するための措置としての必要性があって、その団体の目的および活動範囲が職業倫理の確保と事務の改善を図ることに厳格に限定されているかどうかが問われる必要がある」とされている7)。

司法書士の公共性、専門性に鑑み、目的と活動が厳格に限定されて初めて強制加入が許されているのである。強制加入は原則として許されない、許されている場合は例外と考えるべきである。

このように、司法書士会への強制加入が厳格に考慮されていることと対比して、政治連盟への強制加入は厳格に考慮されているだろうか。
政治連盟は、芦部信喜教授のいう「専門的技術を要し、公共的性格を有する職業の団体」にはあたらない。また、佐藤幸治教授のいう「その団体の目的および活動範囲が厳格に限定」されているわけでもない。

(3)以上により、任意の加入団体であるべきところの政治連盟へは、そもそも強制的に加入される理由は何もない。政治連盟に加入するかしないのかは、司法書士個人一人ひとりの選択に委ねられるべきである。
したがって、同時入退会の規約は、消極的結社の自由を侵害すると考える。

1) 野中俊彦他 憲法Ⅰ[新版] 328貢
2) 橋本基弘   近代憲法における団体と個人 286貢
3) 野中俊彦他  前掲(注1) 337貢
4) 日本司法書士政治連盟20年史 37貢、99貢参照
政治連盟誕生のいきさつが書かれている。『いわゆる第一次行政改革の太田メモ   という、1964年(昭和39年)太田薫氏(当時は分科会の委員長でした)が、「司法書士制度というものは廃止の方向で検討すべきである」と世間に吹聴したわけですよ。そういうようなことから、いわゆる政治連盟の草の根といいますか、あけぼのといいますか、そういうような時期を迎えたわけです』
また、議員連盟と司法書士法の改正についても述べている。『昭和60年の第二   次臨調の関係で司法書士法の改正があったわけです。日司連会長、日司政連会長を先頭に議員連盟にお願いしまして国会対策をやりました。』
5) 橋本基弘 前掲(注2) 288貢参照
6) 芦部信喜 憲法 新版 197貢
7) 佐藤幸治 憲法[第三版] 550貢

  1. はじめに
  2. 結社の自由との関係について
  3. 思想・良心の自由との関係について
  4. 判例考察
  5. 私人間効力について
  6. おわりに
  7. 参考文献

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