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論考

思想・良心の自由との関係について

(1)司法書士会への入会と政治連盟への「同時入退会」は、構成員である司法書士の思想及び良心の自由(憲法19条)を侵害するものではないか。
政治連盟は、政治資金規正法上の政治団体であるところ、政治的活動を行う団体に在籍するか否かの自由は、憲法19条及び政治活動の自由(憲法21条1項)で保障されているから、政治連盟に加入することも退会することも自由であるべきである。

本稿では、思想・良心の自由との関係について論じる。

そもそも、憲法19条の趣旨は、「思想及び良心」は内心の自由として個人の尊厳(憲法13条)の中核をなすものであるにもかかわらず、過去の歴史においてしばしば弾圧されてきた事実に鑑み、すべての精神的自由権の根源であることを明確にしたものである。

わが国では明治憲法下において、治安維持法の運用にみられるように特定の思想を反国家的なものとして弾圧するという、内心の自由そのものが侵害される事例が少なくなかった。
日本国憲法が、精神的自由に関する諸規定の冒頭において、思想・良心の自由をとくに保障した意義はここにある8)。 


(2)そこで問題は、司法書士会への入会と政治連盟の同時入退会のどのような点が、私の思想・良心の自由を侵害するというのだろうか。

ここで、憲法19条の「思想及び良心」とは何を指すのか、「侵してはならない」とはどのような意味を指すのか問題として挙げておく必要がある。

一般に、「思想及び良心」とは、思想と良心とをあえてとくに区別せず、両者を一体として捉え、広く「思想」という人の内心における精神活動の自由と考えられている9)
それでは、人の内心とは何か。

この問題に関しては、人の内心におけるものの見方のうち、信仰に準ずべき世界観、人生観等個人の人格形成の核心をなすものに限られるとする限定説10)と、人の内心におけるものの見方ないし考え方を広く意味すると解する広義説11)の対立がある。

限定説は、人格形成活動に関連のない内心の活動を含めると、「思想・良心の自由」の高位の価値を希薄にして、その自由の保障を軽くしてしまうことをその理由とする12)

最高裁は、名誉毀損に対する救済方法の一つである謝罪広告の強制について、「時にはこれを強制することが債務者の人格を無視して著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、いわゆる強制執行に適さない場合に該当することもありうるであろうけれど、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するにとどまる程度のものにあっては」これを認めると判示13)している。
この判決は、謝罪広告一般を思想・良心の自由に反しないとしているわけではないが、判決が憲法19条の保障の内容を限定的に考えるのか、広義に捉えているのかは明確ではない。

私は、内心の自由とは、個人が個人であることの基礎であり、また憲法19条が精神的自由権の原理的保障の意味を強くもっていることに重きをおき、思想・良心を広くとらえ、個人の内心活動一般として把握するのが適切と考える。
次に、「侵してはならない」の意味であるが、具体的には思想の強制をしたり、その思想に基づく不利益な取扱いを禁止することである。


(3)以上により、司法書士会という強制加入団体が、会員に対して会員の意に添わない特定の政党、政治家の後援を主たる任務とする政治団体への協力を義務づけることが、会員の思想・良心の自由を侵害すると考えるのである。

 司法書士会とは別に、その政治活動の実働部隊14)としての政治団体たる政治連盟の結成は、司法書士会の政治活動に制約があることを慮った結果でもあった(政治資金規制法の規制が強化され、司法書士会が政治連盟に対し年間一定額以上の政治献金をすることができなくなったため、政治連盟の会費は会員より強制徴収するほかなくなったため、平成7年の大分県司法書士会の定時総会で規則改正15)された)。

したがって、このような事情を鑑みれば、「同時入退会」という手段は、政治資金規制法の潜脱をはかったものであり、なお一層、会員の政治的信条をふみにじる強制である。


8) 芦部信喜 前掲(注6) 139貢
9) 芦部信喜 憲法学 Ⅲ 人権各論(1) 103貢
10) 前掲(注1) 282貢
11) 前掲(注9)104貢
12) 伊藤正巳 憲法[第三版] 257貢
13) 最大判昭和31年7月4日刑集10巻7号 785貢
14) 南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟事件第一審判決
判例時報1181号 54貢
判決は、政治連盟を「税理士会とは別に、その政治活動の実働部隊としての政治団体たる」と認定した。
同様に、同訴訟事件の上告審判決(判例時報1571号 20貢)では、税理士政治連盟を、「政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、金員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体」と把握している。
15) 判例時報1571号 18貢参照
平成6年の政治改革関連の法改正の一つとしての政治資金規正法の改正により、会社、労組その他の団体(税理士会も含まれる)は、政党、政治資金団体及び資金管理団体以外の政治団体(税理士政治連盟のようないわばトンネル機関としての政治団体も含まれる)に政治献金をすることが禁止されるに至った

 

論考の概要
1、はじめに
2、結社の自由との関係について
4、判例考察
5、私人間効力について
6、おわりに 
参考文献